福田平八郎が描いた「雨」という作品が東京国立近代美術館に所蔵されている。画面一杯に描かれた瓦に夏の雨が降り始め、ぽつぽつと瓦に雨跡を残している様子が描かれている。その絵をみていると夏の夕暮れの匂いや空気をふと感じられるような気がしてとても気持ちが良い。
先日建築家の細矢仁さんの新作を見学させて頂く機会があった。ひとつひとつの部屋がとても小さな共同住宅で、最大限の容積を作り出すことで手一杯になってしまいそうな計画だったが、PCの出窓や薄いコンクリートの表札、階段の踏面を少しだけ洗い出して骨材をみせていたりと細矢さんのコンクリート愛を感じた。
この共同住宅に部屋の一辺になんとかベッドが一台置けるように計画したという本当に最小限の部屋があった。その部屋の窓からは傾いてほとんど敷地を越境している隣地の木造住宅の屋根がほとんど触れそうな距離で見ることができる。この窓をみて先に書いた福田平八郎の作品を思いだした。当日は晴れだったので体感できなかったが、雨が降ればきっと福田の絵のような風景が見れるだろう。
狭い、高いといわれる東京の住宅だが、このほとんど猫の目線のような風景に都市に住まうアクチュアリティを感じた。