実家の前の浜辺に黒いランドセルが流れ着いた。内側のポケットには名前と小学校名、電話番号と住所が書かれた紙が入っていた。住所から2011年の震災で流されたものだとわかる。そのままにしておくのも気が引け、拾って父親がそこに書かれている番号に電話してみることにした。しかしその番号は現在使用されておらず、改めて住所をネットで検索してみるとやはり津波の被害があった地域だった。

小学校にも電話してみたが日曜日でつながらず。私はその日のうちに自宅に帰らなければならずその日はそれでおしまい。

しばらくその出来事を忘れていたのだがふと思い出し実家に連絡してみると、翌日その小学校と連絡が取れ、小学校の先生が中学校に、中学校の先生がその保護者に連絡を取ってくれたらしい。

そしてランドセルの持ち主の母親から連絡があったようだ。家は流されてしまったがランドセルの持ち主の少年は現在高校生になり、元気に過ごしているようだ。ランドセルを送って欲しいということだったので送ってあげたとのこと。

少年がどんな気持ちでランドセルを受け取ったかは分からないが、６年以上も海を漂ったそのランドセルが持ち主のもとに戻ったことが少し嬉しかった。